「手を挙げたら損」をなくす。改善が続く文化のつくり方
制度や仕組みは整えられる。では、その仕組みを作る人・回す人は誰なのか。このプログラムで私たちが据えたテーマは、制度でも手法でもなく、「手を挙げた人が報われる」という文化そのものでした。
課題
ご相談をいただいた時点で、はっきりした構図がありました。仕組みは設計できる。しかし、それを立ち上げ、維持する人の負荷は誰も引き受けていない。多くの組織で、改善活動は「手が空いている人の仕事」と見なされます。結果として、いちばん問題意識の高い人が、いちばん損をする構造ができあがります。
- 勉強会や改善活動を企画しても、人が集まらない
- 間接的な活動は評価されず、本業の合間の持ち出しになる
- 手を挙げた人ほど負荷が増え、やがて疲弊して離れていく
取り組み
モデルケースとして、講師自身の実体験を扱いました。複数のプロジェクトを抱えて自らも限界にあったとき、疲弊していく仲間を前に「誰かが手を挙げなければ、このまま仲間を失い続ける」と決めた話です。理屈ではなく、一人の実話として提示しました。
その物語から、文化が根づく5つのステップを型として抽出しています。
- ① 志で手を挙げる(自分事の危機感が出発点)
- ② 仲間を集める(一人でできることには限界がある)
- ③ 会社の活動にする(経営に提案し、時間と正当性を得る)
- ④ 感謝を見える化する(「ありがとう」が届くと仲間が増える)
- ⑤ 会社が評価で称える(報われる姿が、次の一手を呼ぶ)
あわせて「手を挙げる人・支える人・称える人」という三つの立場を示しました。全員が起案者になる必要はありません。応援する、広める、レビューだけ引き受ける——関わり方の濃淡を認めたうえで、どの立場も文化の当事者であると位置づけています。演習は全員が記名で提出する形式に切り替えました。
成果
まず、受講者の関与が目に見えて厚くなりました。演習は全員が記名で提出し、発表の場でも次々と自分の言葉が出てきます。「手を挙げる/支える/称える」のどれなら自分にできるかを、それぞれが具体的に語れる状態になりました。
そして、研修が行動に転化した第1号が生まれました。受講者のお一人が、社内で品質向上委員会を立ち上げたのです。同時にその方から「再発防止策を、運用まで持っていけない」という次の壁が提示されました。これは私たちにとって、次の支援テーマがご本人の言葉で定義された瞬間でもあります。
演習を通じて、経営が決めるべき論点も言語化されました。改善活動の時間をどう確保するか。間接的な活動を何をもって評価するか。いずれも現場の努力では動かせない領域です。私たちはこれを、今後の取り組みが成立するための前提条件として整理し、経営層と議論すべき論点に位置づけています。
気付きは確かにありました。あとは、明日から現場が変わる手応えをどう作るか。
ノアブリッジは、文化を「醸成されるもの」で終わらせません。誰が手を挙げ、誰が支え、誰が称えるのか。その構造を設計し、動き出すところまで伴走します。本件の支援は現在も継続中です。組織の風土づくりにお悩みの際は、ぜひご相談ください。